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このページは私達が1995年から2003年までの9年間、リンゴ園経営に関わった時の記録です。このときも行き当たりばったりにそうなってしまい、思いもかけぬ出来事にたくさん遭遇しました。今は、とても貴重な良い思い出です。
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受粉作業と摘花作業 |
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花の咲く時期は農家にとっては受粉作業と、摘花作業の時期です。周りのリンゴ農家の人達も作業をしています。私はI さんに連絡して、来園したオーナーに作業を教えてくれるよう頼みました。I さんはリンゴ園へ来て教えてくれました。でもそれは一回だけでした。私が、「◯◯日は△△さんが来るのでお願いします。」と言って置いても一向にリンゴ園に姿を見せないのです。仕方なく私達が前回教わったばかりことを、オーナーの人に教えました。
オーナーが来る日は私達はいつもリンゴ園へ行くのですが、I さんが来ている気配はありません。オーナーが作業をする、と言ってもそれは真似事みたいなもので実際は農家がやらなければならないのに、I さんがリンゴ園に来て作業をしている節は全くないのです。オーナーがついてない木もほったらかしです。これは困った、と思いました。
オーナーがついていない木については、私達の知ったことではありませんが、オーナーの木は真面目に手入れをしてもらわなければ私達の責任問題です。何度か、キチンと手入れをしてくれるよう頼みましたが、何の効果もありませんでした。
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摘花作業に手を出す |
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花の時期も終わり、受粉作業もしなかったのに、りんごの花は実になりました。一房5〜6個の小さな実が枝にびっしりついています。それでもI さんは来ません。私達は心配になりました。オーナーに対して、「I さんが手入れをしてくれなかったから。」と言ってすますことは出来ません。私達が頼んでオーナーになってもらった、私達の友達なのです。仕方なく、夫と私でオーナーのついている木だけは作業をすることにしました。5月から6月半ばまでは、予定のない日は毎日リンゴ園に通って、オーナーの木だけは何とか摘花と摘果を終えました。
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7月のリンゴ園 |
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この年は別な章「フランス・アルプス エクランを訪ねて」でも書きましたように、6月23日から7月16日までの24日間、フランス旅行をしました。7月18日、久しぶりにリンゴ園へ行ってみると、リンゴはもうピンポン玉くらいに大きくなっていました。留守中に摘果に来たいと言う人がいたので、I さんに摘果の指導を頼んでおいたのですが、気になりました。そのオーナーに電話をかけて様子をたずねると「I さんは来なかったわよ。私達が困っていたら隣のリンゴ園の人が摘果のやり方を教えてくれたので、無事出来たわよ。」と言うことでした。私はI さんのいい加減さにあきれましたが、隣の方の親切はとても有り難く思いました。
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素人の摘果作業とは |
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摘果作業とは、放っておけば沢山なってしまう実を間引いて、ひとつの実が十分大きくなり、木にとっても負担にならない数に減らすことです。千秋の場合、大体20〜30a間隔に一つの実を残す、という感じで、その他の実を取ってしまうのです。
ところが、素人がやるとどうしても実を沢山残し過ぎるのです。実が小さいうちにやるので、30aも間隔を明けることは怖くて出来ません。「かわいそう。」という人もいます。しかし、実が大きくなってくると「これでは実が多すぎる。」ということが分かります。そこで追加の摘果をします。そしてもう少し大きくなると、それでも摘果不足だと分かります。そしてまた摘果をします。
私達も最初はそうでした。何年か経験するうちにかなり上手になりましたが、恐がりというのか、ケチというのか、私などなかなか出来ない面もありました。
殆どのオーナーさんは思い切った摘果が出来ませんでした。結局後は私達がやることになりました。
リンゴの木一本分の摘果をするにはかなりの根気と時間が必要です。殆どのオーナーさんは、直ぐ飽きてしまい、せいぜい3分の一ぐらいやると、帰ってしまいました。結局後は私達がやることになりました
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追加の摘果 |
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6月にフランスに行く前には、一応オーナーの木は摘果が終わった、という気になっていましたが、帰ってみるとやっぱり不十分だということが分かりました。私達はまたもやリンゴ園に通いました。それでもI さんは姿を見せませんでした。
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オーナーのついていない木に手を出す |
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オーナーのついている木の摘果に目鼻がつくと、今度はオーナーのついていない木のことが気にかかりだしました。全く手入れをされていない木はピンポン玉くらいの実がビッシリついて、枝が垂れ下がり、今にも折れそうなのです。木がかわいそうになって、仕方なく、今度はオーナーのついていない木にまで手を出しました。でも、こちらは数も多く、時間がかかりました。
夏休みになって、私のかつての教え子で、大学生の新吾君が泊まりがけで手伝いに来てくれました。彼も一本オーナーになっているのです。都会っ子の彼には初めての経験で、面白がってやってくれました。一個の実を残す為に、20〜30個の実をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。「ストレス解消にはもってこいだね。」と、楽しんでくれたようでした。
結局、リンゴ園の100本程の木の摘果作業が大体終わったのは8月も終わりの頃で、収穫まであとひと月になっていました。
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収穫案内を出す |
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千秋の収穫の時期が近づきました。実も大きく赤くなって来ました。素人が手入れをした割にはなかなかの出来映えです。私達にも感慨深いものがありました。
千秋の収穫期は9月の下旬から10月の上旬です。つがるより一月遅く、フジより一月早いのです。9月上旬にはオーナーに収穫の案内を出さなければなりません。リンゴの収穫時期は年によって多少前後します。それを半月も早く予想するのは難しいことでしたが、人間の都合もあることですし9月23日(お彼岸の中日)から10月10日(体育の日)とする案内状を出しました。葉書を同封し、来園日時、人数などを連絡してもらうことにしました。
当時、インターネットも携帯電話も我が家には無く、郵便と、家電話だけが連絡手段でした。
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早い木、遅い木 |
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リンゴ園の100本の木が全部一斉に熟すわけではありません。熟すのが早い木、遅い木、中ぐらいの木、と、様々です。そういう違いを無視して、一斉に収穫日を決めるわけですから、無理がありました。
オーナーが来園してから、その日一番状態の良い木を選んで「これがあなたの木です。」というやり方ならまだ良いのですが、うちのやり方は、春に木を決めてしまっているのですから、オーナーの都合と木の状態が合うとは限らないのです。そこで早い木のオーナーには、「あなたはなるべく早く来て下さい。」と、遅い木のオーナーには、「あなたはなるべく遅く来て下さい。」と、個々にお知らせをしました
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上の実、下の実 |
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一本の木でも、上の実と下の実では熟す時期に違いがあります。上から赤くなり、段々下へ下がります。その変化の早い木と遅い木があります。変化の遅い木は、上の方は収穫適期になっているのに下の方はまだまだ未熟ということです。一回で収穫するのは無理なので、そういう木のオーナーには「なるべく2回来て下さい。」とお願いしました。都合の付かないオーナーへは「未熟な実はジャムなどに加工して下さい。」とお願いしました。
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